「峠 最後のサムライ」インタビュー in 長谷川邸

2018年11月20日、映画「峠 最後のサムライ」のロケが長谷川邸で行われました。

新潟県内を中心にロケを行っており、この越路の長谷川邸でもロケを敢行。
長谷川邸の土間は撮影のセットとして復元されていて、活気ある昔の生活感を感じる土間になっていました。

©2020年『峠 最後のサムライ』製作委員会
©2020年『峠 最後のサムライ』製作委員会

司馬遼太郎の河井継之助を描いた長編歴史小説「峠」が初めて、小泉堯史監督によって映像化されます。
映画「峠 最後のサムライ」の主演は、役所広司さん。公開は、3度の延期を経て2022年6月17日です。

映画プロデューサー 伊藤伴雄さんインタビュー

伊藤伴雄プロデューサー

今回の取材で、映画プロデューサーの伊藤伴雄さんにお話を伺うことができました。
伊藤伴雄さんは、高倉健主演『あ・うん』、『少年H』、岡田准一主演『追憶』など数多くの映画・テレビドラマに携わってこられたプロデューサーです。

「峠」を初めて映像化するきっかけ、その思いを聞かせてください。

小泉監督自身が若い頃、峠の連載は司馬さん(原作の司馬遼太郎)が当時の毎日新聞の朝刊に連載していたものを読んでいて、いつか映画化したいと。その思いを長年温めていて、去年、僕の方にやりたいと話が来て、映画化に至った。

公開する映画「峠 最後のサムライ」の「サムライ」はカタカナです。

なぜこのようにしたかというと、司馬さんが冒頭で書いているのですね。

「サムライ」が世界中に通じる言葉で、一番日本人の心・姿を表している。 美しい日本人の姿、それが「サムライ」だと。それにふさわしい人物を探していたら河井継之助だったと。

河井継之助を書くことによって司馬さんの中でも日本人のサムライ、一番大事にしているサムライが何なのかを自分の中で見つけられるのではないか。そういう気持ちで連載を書き始め最後に書き終わった後、私の中では日本人が一番大事する日本人の心、サムライを掴んだと司馬さんが書いているのですよ。 それで、サムライはカタカナにしたのです。 世界中に通じる言葉、サムライの代表が河井継之助だと。

公開する2020年(当初)は東京オリンピックもあり、日本人だけでなく世界中の人に見てもらいたいです。

キャスティングについて

河井継之助の父役の田中泯さん、妻役の松たか子さんなど皆さん立ち姿が美しい。立ち姿が美しい人というのが監督の思いでね。映画を作る上でサムライ、日本人のあるべき大事にすべき心はなんなのかというときに、立ち姿が綺麗な方とやりたいと。
そういう気持ちでキャスティングしていきましたね。監督自身も武道をやっていて、立ち姿は非常に大事だと。パッとした姿、立ち姿が綺麗な人をキャスティングしました。

長岡など新潟県内の撮影エビソードなど

まだ発表できないのですね。

2020年に映画の公開(当初)なので、そこで一番盛り上がれるように映画の中身の情報出しを行っています。長岡でもオープンセットを作ったのですよ。そこにも長岡市民の皆さんに出演してもらいました。
関川村の渡邉邸、新潟市の北方文化博物館(伊藤邸)、小千谷の西脇邸。
色々なところで撮影させていただいて。

監督と僕が4月にきているのですよ。新潟県内を全部まわって。監督と、長岡の話なので、できるだけ新潟県内で撮影したいと話をして。監督の前の作品の時に東北、九州など色んな所で撮影しているのですよ。日本全国移動しているだけで日数がとられ、監督の演出時間が思う様に取れなくなってしまう。

今回は新潟で、長岡中心にやりたいねって。
お世辞でなく、新潟や長岡には素晴らしいところがたくさんあったの。
新潟県全部で撮影できて感謝している。

新潟県はいいお米がとれるのは、「川」。水が綺麗。雪解けの水。
なぜこういう豪農・豪商がいるか、川を伝って会津の方から材木が来ている。京都から北方からの商業もあったろうし、そういう意味で新潟県は建物とかが素晴らしいし、非常に人が育ちやすい環境であったのだろうと思う。三島億次郎、ビールメーカー、日本酒メーカーなどみんな創始者がこちらなのだよね。人とか、文化が育つところだったのだろうな。

新潟県の特徴を聞くと、謙虚さ・奥ゆかしさという。
僕たちからすると、例えば田中角栄さんはそういうイメージではないのだけどね。ところが、仕事で半年間付き合っていくとわかる。奥ゆかしいのだなと。そういう人たちがこういう建物を作っていったのだな、と感じます。
非常に映画としてふさわしいロケーションだと思います。

この映画が公開されたら、ドラマとか映画の人たちここに沢山来ますよ。
「あれこんないいとこあったのだ」「どこだここって」
映画だけでなく、いろいろな人が訪ねてくると思うのだよね。いいところが沢山ある。

フィルムを使うこだわりについて

僕がプロデュースする映画は、フィルムが多いのです。
でも日本ではフィルムは珍しい。山田洋次監督、降旗康男監督とか。是枝裕和監督が戻ったのかな。そんなにもういないのです。

小泉監督いわく、フィルムでやると俳優さんの気持ちが違う。デジタルでやるとモニタに集まりチェックする。あーだ、こーだ言い出す。それが良くない。一番本来の映画撮影のあるべき姿がフィルムかなと僕は思うね。

昔、高倉健さんとCMやった時、モニタ見てCM監督が「右だ、左だ」って言った時、
高倉健さんが「俺らは人形じゃねえんだ、バカヤロー」って怒ったことがある。
人ってそんなもんじゃないぞってことですよ。

大事にしたものは、このクルーは黒澤明のクルーなのですよ。カメラマンの上田さん(上田正治)もそう、デザイナーもそう。監督もそう。

小泉監督だけなのですよ、内弟子というのは。

あとは、助監督は沢山いるのだけど、みな黒澤組の伝統を重んじている人たちなので。
何を大事にしているかという一例を言うと、みんなが双眼鏡見ながらロケハンしているのです。(画面構成に)ロングが多い。
もの凄い壮大な画作り。
そういうふうに作品を撮りたいという思いが強かったので。他のドラマや映画とちょっと違うなと思われると思う。
すごい望遠を使っていますからね。
エキストラで参加した人もみんな「どこにカメラがあるのですか」ってビックリしていた。こだわりっていうか、黒沢さんの画作りを踏襲したかな。

最後に長岡市民にメッセージを。

作り手側もそうですけど、この映画を一緒に見て河井継之助を考え直す。またそれを通じて、司馬さんが言うように、日本人のいちばん大事な美しい日本人というのはなんなのか、この映画を通してみんな掴めればいいのではないかと思います。

僕たちからしたら、荒らされていないから良かった(笑)
みんなが来ていない分、画作りにとって新鮮なのです。有名な所はみんな撮り飽きているし。そういう意味ではいい画作りができたと思います。

映画「峠 最後のサムライ」

原作:司馬遼太郎

監督・脚本:小泉堯史

出演:役所広司

松たか子、田中泯、香川京子

佐々木蔵之介、坂東龍汰、永山絢斗

芳根京子、榎木孝明、渡辺大、AKIRA

矢島健一、山本學、井川比佐志

東出昌大、吉岡秀隆

仲代達矢

※敬称略

2022年6月17日公開

http://touge-movie.com/